2016-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『日本型「教養」の運命』筒井清忠著、岩波書店2009年

九鬼周造も和辻哲郎も新渡戸信者であった。 新渡戸は台湾植民運営、国際連盟の創設と言った実務家以外にも教育者として日本社会を形成した面を持っている。 私が新渡戸を植民研究者、アダム・スミス研究者として認識したのも、新渡戸の生徒であった矢内原を…

「日本の折衷主義 ー新渡戸稲造論ー」鶴見俊輔著、『近代日本思想史講座Ⅲ』筑摩1960

「近代日本思想史講座」に納められている鶴見俊輔の「日本の折衷主義」は、日本近代思想史が、マルクス主義の思想史家によってされる修正主義の批判だけでなく、折衷主義で議論される事が重要と、その折衷主義者であった新渡戸稲造論が展開している。 鶴見に…

太平洋問題調査会第3回京都会議(1929年)

「太平洋問題 」一九二九年京都会議 著者 新渡戸稲造/編 出版者 東京 太平洋問題調査会 出版年 1930 新渡戸が理事長になり議長も務めた太平洋問題調査会第3回京都会議(1929年)。 その後の第4回杭州・上海会議(1931年)そして新渡戸を死を招いた第5回バン…

象徴天皇の起源

現行憲法の天皇が象徴である、というのが新渡戸から引用の可能性がある、という文章を目にして、新渡戸ファン(専門家ではありません)として「そんなワケない!」という思いで新渡戸の文献を読んできた。新渡戸は自由・教養主義の植民・帝国・皇道主義なの…

『日本-その問題と発展の諸局面』(31)

今回で31回続いた新渡戸稲造の『日本-その問題と発展の諸局面』を天皇制を中心になぞるブログは終了したい。 読者がいる、と思えばこそ続いたのでありおつきあいいただいた皆様には感謝したい。 さて、最終回は、本書の最終章 「第七章日本人の思想生活」…

『日本-その問題と発展の諸局面』(29)

「第四章政府と政治」の最終項【十一、来るべき改革】では日本の歴史上にあった3つの改革 ー1)七世紀の大化の改新、2)12世紀の鎌倉時代の改革、3)明治維新 ー が説明されている。 新渡戸は1つ目と3つ目の改革、即ち大化の改新と明治維新の共通点を…

『日本-その問題と発展の諸局面』(30)

『日本-その問題と発展の諸局面』の第6章、労働、食糧、人口に国体と労働問題が出て来る。 まず新渡戸は失業と言う職業は日本になかった、と説く。何某かの形で職がえられたし、なければ家族が守った。勿論実際の話は数々の悲劇と喜劇があった、とも。 1…

『日本-その問題と発展の諸局面』(28)

『日本-その問題と発展の諸局面』「第四章政府と政治」を閉めるのは【十一、来るべき改革】 ここにある最後の部分、天皇制はどうあるべきかについては以前書いたが、再度コピーしておく。 「日本は、世界に対して、”尊王主義”は”民主主義”と矛盾しはしない…