『日本-その問題と発展の諸局面』(29)

「第四章政府と政治」の最終項【十一、来るべき改革】では日本の歴史上にあった3つの改革 ー1)七世紀の大化の改新、2)12世紀の鎌倉時代の改革、3)明治維新 ー が説明されている。

 

新渡戸は1つ目と3つ目の改革、即ち大化の改新明治維新の共通点を指摘する。1300年も隔たって見られるその共通点こそ「民族精神の顕現」であると言う。

 

共通点1.皇室の正統性と大権が改めて強調された。(皇室の権威の安定)

共通点2.外国文物の自由な全面的輸入。(外国思想の導入)

共通点3.土地の開放によって庶民の経済的法的地位が向上。(民衆の権利の拡大)

 

3つ目の民主主義を目指す措置について新渡戸はこう語る。

「彼ら(武士)は”民主主義”というような言葉の存在を知りさえしないで、民主主義の偉業を始めたのだった。「平等」という語は仏教でよく知られた語だったが、誰一人それを政治的表現とは思いつかなかった。(中略)明治のの始めに、ルソーがこの国に入り、生存中フランスやスイスで受けたのより、公正な待遇を受けた。」(『日本-その問題と発展の諸局面』新渡戸稲造全集第18巻、2001、241−242頁)

 

新渡戸がこれを書いた1930年頃の時代的背景がわからないが、皇室への批判があったように想像する。再度下記に引用する言葉は、共産主義の脅威を示しているのではないか?

 

「日本は、世界に対して、”尊王主義”は”民主主義”と矛盾しはしないこと、それはプロレタリア問題を処理する力がなくはないこと。国王は社会正義達成のための”天”の器となることができることを証明する公道に就いているのである。」(『日本ーその問題と発展の諸局面』243頁,新渡戸稲造全集第18巻、2001年、教文館

 

【十一、来るべき改革】はこれで終了。次は5章の教育は飛ばして、6章の労働、食糧、人口を軽く触れたい。