2016-01-01から1年間の記事一覧

柳田國男と国際聯盟委任統治委員会

柳田國男が国際聯盟委任統治委員会委員であったことを昨年位に初めて知った。 しかも新渡戸のアレンジである。 しかも新渡戸とどうやら決裂したらしい。 柳田の郷土研究は新渡戸の地方(ヂカタ)の研究が基盤になっているのだ。 柳田は新渡戸の背中を見て歩…

矢内原の新渡戸観ー矢内原全集第24巻を返す前に

矢内原の新渡戸観を、矢内原全集第24巻から4回に分けてひろってみた。 矢内原の新渡戸観ー『余の尊敬する人物』 - 新渡戸を知らずに新渡戸を語るなかれ 矢内原の新渡戸観ー天皇陛下への進講 - 新渡戸を知らずに新渡戸を語るなかれ この本を返す前にもう少し…

矢内原の新渡戸観ー『余の尊敬する人物』

矢内原忠雄全集24巻に収められている『余の尊敬する人物』に新渡戸の章がある。 序文が書かれたのは昭和15年、1940年は、矢内原が東大を追われた1937年から3年目。新渡戸が亡くなってから7年目だ。 矢内原はこの本にエレミヤ、日蓮、リンコーン、新渡戸の…

矢内原の新渡戸観ー天皇陛下への進講

矢内原忠雄全集24巻を手にしたのは矢内原が新渡戸をどのように語っているか、それがわかれば、矢内原が昭和天皇に進講した「新渡戸稲造について」の中身がわかるかもしれない、と思ったからである。 なのでこの全集にある4つの新渡戸論の最後の章に、まさに…

”Tropics of Savagery” - Robert Thomas Tierney 桃太郎と南進(追記あり)

新渡戸の桃太郎、日本の植民政策とからめて議論されている。 しかも日本のマレイ人起源、即ちオーストロネシア語族起源を説いている。 「桃太郎の昔噺」ー新渡戸の植民政策を見る - やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa 桃太郎 ー 福沢諭吉も書いている。 ポ…

矢内原の新渡戸観ー『新渡戸先生の宗教』

「内村鑑三と新渡戸稲造」(矢内原忠雄全集24巻、1965年、岩波書店、385-401頁)に、昭和16年1月、芝フレンド教会での矢内原の講演記録「新渡戸先生の宗教」がある。 新渡戸が亡くなって8年目。真珠湾攻撃の年。矢内原が東大を追われた1937年から4年目。 …

矢内原の新渡戸観ー『内村鑑三と新渡戸稲造』

矢内原は、1949年11月25日昭和天皇に「新渡戸稲造について」進講している。 いったいどのような事を話したのか? 戦後、矢内原は新渡戸を改竄しているのだ。植民主義者で帝国主義者だった新渡戸を矢内原はどのように捉えているのか? 矢内原忠雄全集24巻には…

青空文庫と新渡戸稲造

ひさしぶりの新渡戸である。 新渡戸全集は、植民学がまとめてある第四巻だけ購入し手元にあるたが、後は図書館を利用させていただいている。とにかく家にある本をこれ以上増やしたくないからだ。 第5巻を夏頃から借りていよいよ返却する日が迫ってきたので…

芥川と新渡戸

芥川龍之介は好きな小説家だった。小学生の頃良く読んでいた。 彼も新渡戸の生徒だったのだ。 しかも、新渡戸をモデルにした『手巾』という小説を書いている。 青空文庫にあります。 http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/43_15268.html 1916年、芥川…

「ぢかた(地方)の研究」に新渡戸の植民政策を見る(追記あり)

九鬼周造も和辻哲郎も、矢内原も、松本重治も、みんな新渡戸信者だったのである。 そして、民俗研究家の大家、柳田國男を作ったのも新渡戸だったのだ。 これを知った時はショックだった。 文学青年だった柳田が地方研究に向いたのは新渡戸のせいであった。 …

「桃太郎の昔噺」ー新渡戸の植民政策を見る

「地方の研究」(ぢかた、読む)の講演記録に続いて納められているのが桃太郎と分福茶釜の2編である。 関心もなく読む気もなかったのだが、頁をめくった途端のめり込んでしまった! 講演記録「桃太郎の昔噺」には新渡戸の南進論、植民論が紹介されているの…

「分福茶釜の解」ー新渡戸の植民政策を見る

桃太郎に続いて収められているのが「分福茶釜の解」(新渡戸稲造全集 第5巻 197-207頁、2001年、教文館) 新渡戸は世間では「分福」ではなくて「文福」と広く知らされている事に疑問を持つ。そして起源は分福である事を友人の調査などの助けによって解明。…

新渡戸のマルクス批判

ドイツの経済学者グスタフ・フォン・シュモラー 新渡戸全集第五巻を再度借りたのは、地方の研究を読みたかったのと、この巻に収められている「偉人群像」の伊藤公の章で新渡戸が日韓併合を伊藤公に説得している箇所を再度読みたかったからである。 新渡戸は…

『偉人群像』第31章竹内栖鳳画伯

京都東山の竹内栖鳳邸 新渡戸稲造の世界は海のように広く、深い。 新渡戸の交友の中に竹内栖鳳 画伯がいる。 竹内栖鳳、どこかで聞いた名前だったが、京都東山に家を建て今はイタリアンレストランとなっている。私は、(高いので)特別な日にこのレストラン…

新渡戸の天皇象徴論 - バジョットの『イギリス憲政論』

現行憲法が新渡戸の天皇象徴論を参考にしている可能性がある、というコメントをFBで見てそんなはずはない、と新渡戸の文章を読んだ。おかげで新渡戸の天皇論を深く知る事となり、おまけに神武オーストロネシア語族の説も知る事となった。 これで日本の皇室が…

『日本型「教養」の運命』筒井清忠著、岩波書店2009年

九鬼周造も和辻哲郎も新渡戸信者であった。 新渡戸は台湾植民運営、国際連盟の創設と言った実務家以外にも教育者として日本社会を形成した面を持っている。 私が新渡戸を植民研究者、アダム・スミス研究者として認識したのも、新渡戸の生徒であった矢内原を…

「日本の折衷主義 ー新渡戸稲造論ー」鶴見俊輔著、『近代日本思想史講座Ⅲ』筑摩1960

「近代日本思想史講座」に納められている鶴見俊輔の「日本の折衷主義」は、日本近代思想史が、マルクス主義の思想史家によってされる修正主義の批判だけでなく、折衷主義で議論される事が重要と、その折衷主義者であった新渡戸稲造論が展開している。 鶴見に…

太平洋問題調査会第3回京都会議(1929年)

「太平洋問題 」一九二九年京都会議 著者 新渡戸稲造/編 出版者 東京 太平洋問題調査会 出版年 1930 新渡戸が理事長になり議長も務めた太平洋問題調査会第3回京都会議(1929年)。 その後の第4回杭州・上海会議(1931年)そして新渡戸を死を招いた第5回バン…

象徴天皇の起源

現行憲法の天皇が象徴である、というのが新渡戸から引用の可能性がある、という文章を目にして、新渡戸ファン(専門家ではありません)として「そんなワケない!」という思いで新渡戸の文献を読んできた。新渡戸は自由・教養主義の植民・帝国・皇道主義なの…

『日本-その問題と発展の諸局面』(31)

今回で31回続いた新渡戸稲造の『日本-その問題と発展の諸局面』を天皇制を中心になぞるブログは終了したい。 読者がいる、と思えばこそ続いたのでありおつきあいいただいた皆様には感謝したい。 さて、最終回は、本書の最終章 「第七章日本人の思想生活」…

『日本-その問題と発展の諸局面』(29)

「第四章政府と政治」の最終項【十一、来るべき改革】では日本の歴史上にあった3つの改革 ー1)七世紀の大化の改新、2)12世紀の鎌倉時代の改革、3)明治維新 ー が説明されている。 新渡戸は1つ目と3つ目の改革、即ち大化の改新と明治維新の共通点を…

『日本-その問題と発展の諸局面』(30)

『日本-その問題と発展の諸局面』の第6章、労働、食糧、人口に国体と労働問題が出て来る。 まず新渡戸は失業と言う職業は日本になかった、と説く。何某かの形で職がえられたし、なければ家族が守った。勿論実際の話は数々の悲劇と喜劇があった、とも。 1…

『日本-その問題と発展の諸局面』(28)

『日本-その問題と発展の諸局面』「第四章政府と政治」を閉めるのは【十一、来るべき改革】 ここにある最後の部分、天皇制はどうあるべきかについては以前書いたが、再度コピーしておく。 「日本は、世界に対して、”尊王主義”は”民主主義”と矛盾しはしない…

『日本-その問題と発展の諸局面』(27)

『日本-その問題と発展の諸局面』「第四章政府と政治」にある、【十日本の政治における自由な要素】では、日本には「自由思想」はなく、明治維新と共にイギリスとフランスの自由思想が輸入されたが、すぐには根付かなかった、と。 伊藤公が政治思想をドイツ…

『日本-その問題と発展の諸局面』(25)

天皇制と憲法の話である。 『日本-その問題と発展の諸局面』の「第四章政府と政治」の中にある 「四,立憲政治のための訓練」。 この後 「五、天皇の大権」、が続く。 「六、長老政治と枢密院」、「七、貴族院」、「八、選挙制度と政党心理」、「九、政党の…

『日本-その問題と発展の諸局面』(26)

五、天皇の大権 天皇の権限が強化されるとともに制限されている道具として、憲法と皇室典範がありこの2つが日本君主制の法的基礎を為している。 一つは世界最古の王朝の権利を支え、もう一本は民権を支持している。 そして民衆はこの民権を新たに自覚したば…

『日本-その問題と発展の諸局面』(24)

政党結成の困難は、徳川体制下の徒党を禁じる法の下、5人以上で目的が明らかでなく集まると逮捕を免れなかったという思考習慣にあった。 他方、全国の若い不満分子を集めた板垣の政党の動きを新渡戸は批判する。 「時の政府に同情を覚えてよかろう。」と。 …

『日本-その問題と発展の諸局面』(22)

『日本-その問題と発展の諸局面』は25才で即位された昭和天皇に向けてジュネーブの国際連盟から戻った65才の新渡戸が書いているような気もする。 現行憲法の天皇象徴論の起源が新渡戸にある、と評論家の櫻田淳氏が述べていたのが気になって、新渡戸がそんな…

「新渡戸稲造における修養論の位相 : 包摂と排除の視点から」伊藤敏子2015

新渡戸研究、結構あります。 昨年の論文。新渡戸の教養主義とはなんぞや?と気になっていた。 この教養主義が、近衛文麿始め、軍国主義、ファシズムを先導する人材を作っていったように見えるからだ。 下記の論文をサラッと拝読。 「新渡戸稲造における修養…

『日本-その問題と発展の諸局面』(20)

14. 平和会議における日本、はベルサイユ会議の事である。 新渡戸は後藤新平に誘われてこの会議に参加している。 確か、後藤に「世界最大の茶番劇を見に行こう」というような事を言われて同行したはずだ。(記憶が定かではない)しかし、この会議参加で、新…