「桃太郎の昔噺」ー新渡戸の植民政策を見る

f:id:yashinominews:20210821171850p:plain


 「地方の研究」(ぢかた、読む)の講演記録に続いて納められているのが桃太郎と分福茶釜の2編である。

関心もなく読む気もなかったのだが、頁をめくった途端のめり込んでしまった!

 

講演記録「桃太郎の昔噺」には新渡戸の南進論、植民論が紹介されているのだ。(新渡戸稲造全集 第5巻 186−196頁、2001年、教文館

 

実はこのブログ一回書いたところで、ミスって全部消してしまった。

再度書くエネルギーがないので要点だけ。

 

新渡戸は桃太郎こそ日本人の精神構造を作っていると主張。そしてこのお伽噺も日本人も南洋、すなわちマレイが起源の可能性がある、と。ここら辺をフランツ・ボアズや鳥居龍蔵を紹介している。新渡戸はベルツ始めここら辺の民族学大家とも親しかったのだ。

 

新渡戸は桃太郎研究のため78冊本を集め、分析した。

桃太郎は仁智勇の三徳を教えるお伽話しである。新渡戸はここで神武東征の事を述べていないが、神武が海洋民族で、即ち日本人の起源は海洋を自由に渡り植民したマレイ人、オーストロネシア語族である事も再度述べている。

 

桃太郎は、新渡戸の講演は、植民促進説なのだ。

この講演の日時がわからないが1907年の可能性もある。即ち新渡戸の台湾植民事業を終えて日本に戻ってきた頃かもしれない。新渡戸は台湾だけでなくその先の南洋にも日本人が進出して行く事を奨励している。

 

 

桃太郎に関しては、芥川も柳田も書いている。

<追記>

芥川の桃太郎は青空文庫にあった。短い。日本の南進,植民批判だ。芥川はどのような意図で書いたのか。 http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/100_15253.html

 

また英文の研究ペーパーも出ている。きっと新渡戸の植民批判なんだろうな、と想像するのだがいずれ読んでみたい。

Tierney, Robert. "“Folklore, Propaganda, and Parody: The Adventures of Momotarō in the South Seas,”." Proceedings of the Association of Japanese Literary Studies: Travel in Japanese Representational Culture 8 (2008): 489-99.