2020-01-01から1年間の記事一覧

中島岳志著『アジア主義』ー読書メモ

公私にわたり團家との関わりが多少あった時期があった。血盟団事件は最初関心がなかったのだが急に知りたくなって中島岳志さんの本を読んだ記憶がある。 その書きぶりからてっきりジャーナリストだと思っていたが、中島氏は学者さんであった。『アジア主義』…

新渡戸の武士道

イケメン後藤には敵わないが新渡戸もハンサムだった 新渡戸といえば「武士道」。 そう言われと、新渡戸研究者や私のような新渡戸愛好者は違和感を感じるのではないだろうか?「わかっちゃあねえな」と。 そもそも「武士道」は英語で書かれ、新渡戸の妻のメア…

矢内原の満州・大陸政策小論5本

矢内原忠雄全集第5巻の「論文(下)」には6本の南洋に関する小論が収められている。これをきちんと読もうと本を再度開いのだが、その6本の論文の前に5本の満州と大陸に関する小論が収められている。中国のことも満州のこともわからないから読まないでいたが…

後藤新平の大亜細亜主義(5)

またイケメン後藤新平に会いに水沢に行きたいなあ 後藤新平の「大亜細亜主義」いよいよ最後となりました。 後藤の郷里、水沢にある後藤新平記念館の皆様にはせっかく文字を書き起こし、難しい漢字を調べていただいたのに申し訳ないです。 これも意地になって…

後藤新平の大亜細亜主義(4)

矢野仁一の「中国非国論」と後藤新平の「大亜細亜主義」その中国認識は同じだったのでは? 後藤新平の大亜細亜主義。短い論文だが難しいし奥が深い。中国問題ど素人の私はわからない。水沢の後藤記念館の皆さんがせっかく原稿を打ち直し、漢字も調べていただ…

後藤新平の大亜細亜主義(3)

後藤新平の大亜細亜主義は、現在のインド太平洋構想、環太平洋構想、アジア太平洋経済協力、大東亜共同宣言、大東亜共栄圏 と理解する出発点のような気がしている。 西洋の世界観に対抗するアジア中心の概念なのだ。 前回からの続き。文章は水沢の後藤記念館…

『日本・1945年の視点』三輪公忠著ー再読 第6章国家の連続性と占領協力

第6章「国家の連続性と占領協力」に矢内原が戦後、新渡戸を守ろうとして、改竄したことが書かれている。以前読んだ時はそのことを確かめるべく矢内原や新渡戸にのめり込んで行ったのだった。 戦後の新渡戸に対する「誤解」「虚像」は弟子の矢内原が作ったの…

『日本・1945年の視点』三輪公忠著ー再読 第5章地域的普遍主義から地球的普遍主義へ

本棚に戻さずによかった。8月15日に『日本・1945年の視点』にある、解放か?侵略か?を議論した「第5章地域的普遍主義から地球的普遍主義へ」を読めたことは幸運だった。 この章は以下の4節から構成される。 1 地政学の援用 2 戦後秩序への提言 ー 「大…

『日本・1945年の視点』三輪公忠著ー再読 4章アジア新秩序の理念と現実

矢野仁一と内藤湖南 三輪公忠氏のこの本と同時に後藤新平の大亜細亜主義の論文を読んでいる。あれこれ読みたい資料が出てきて収拾がつかなくなり、今4、5点を同時に読んでいるのだが、いっしょでよかった。同じ事が書かれているのだ。 後藤新平の亜細亜主…

後藤新平の大亜細亜主義(2)

英国の香港統治を台湾統治に模倣した後藤新平は国際主義者のように思っていたが、下記の文を読むと強硬な”排他的”アジア主義である事がわかる。伊藤博文が反対した理由もわかる。後藤は蘭学を学んでいたが、同時に中国からも多くを学んでいたはずだ。という…

『日本・1945年の視点』三輪公忠著ー再読 3章 大正の青年と明治神宮の杜

三輪公忠氏はウィキを見ると国際政治学者とある。 『日本・1945年の視点』は多くの視点、多くの事件が書かれており学術論文といより雑文(雑な文章という意味ではない)随筆的な内容だ。 3章 大正の青年と明治神宮の杜 も面白いがあまりにも多くん情報が集…

後藤新平の大亜細亜主義(1)

水沢の後藤記念館とイケメン新平 インド太平洋構想のルーツに亜細亜主義があるのではと、ハウスホーファーや玄洋社を読んでみたがよくわからなかった。後藤新平が伊藤博文に広島の宮島で大亜細亜主義を語っているのは後藤の「厳島夜話」で知った。 何度か読…

『日本・1945年の視点』三輪公忠著ー再読

私が三輪公忠氏の著書に出会ったのは新渡戸にのめり込んだ頃で、上記のブログにあるように北岡伸一氏のトンデモ本を読んで頭から煙を出していた時だ。 『日本・1945年の視点』には新渡戸と矢内原のことも結構書かれていて、購入を決意した。いくつか感想文を…

後藤・新渡戸を師と仰いだ台湾の李登輝元総統

私の新渡戸・後藤との出会いは、本格的には矢内原の『南洋群島の研究』をきっかけにした植民論であるが、それ以前も李登輝氏の本で知ったことにある。 その李登輝氏を知ったのはベストセラーとなった『戦争論』で「え?日本悪くなかったの?」と気づかせてく…

もう一つの『海上の道』国分直一著

柳田國男を否定したのは新渡戸だけではない。以前ナチスの優生学イデオロギーにも繋がる柳田の民俗学Volkloreが90年代に南島イデオロギーとしてかなり批判されていた事を書いた。 オーストロネシア語族と台湾の民族学・考古学の事を書こうと色々手元にある文…

緒方貞子著『満州事変』と新渡戸

緒方貞子さんの「満州事変」(岩波現代文庫2019)を読みおえました。 関連する歴史も地理の知識もなく半分も理解できていませんが、読みだすと止まらないほど面白かったのです。緒方さんの英語で書かれた博士論文が基礎になっています。 満州事変に関しては…

維新負け組の新渡戸

special.sankei.com 稲村公望さんの新渡戸に対する誤解を解きたく、それはある意味世間の新渡戸に対する誤解にも通じるので思い切ってこのFBとブログを立ち上げました。 さて「武士道」を書いた新渡戸は武士の階級。すなわち庶民よりも位や社会的環境は恵ま…

植民地主義者、帝国主義者の新渡戸と柳田

村井紀著『南島イデオロギーの発生』は柳田批判で話題になった本ではないかと思う。薄っすらとした読書の記憶しかないが共感する部分と、小熊英二の「単一民族の神話」にも通じる左翼的な「匂い」を感じて、柳田に距離を置くきっかけになった。 同志社大学の…

新渡戸に見捨てられ、批判されるファシスト柳田の民俗学

続いて佐谷 眞木人著『民俗学・台湾・国際連盟』から。 柳田を国際連盟に推挙したのが新渡戸である。 柳田は新渡戸の委任統治に対する熱意を理解していた。 柳田の民俗学は新渡戸が示した地方文化研究の根本的学問の方向性を引き継いでいる。 その新渡戸に柳…

柳田を国際連盟委任統治委員に招いた新渡戸

新渡戸が国際連盟の事務次長であった事実を日本人が知らない。米国、ドイツ留学に加え、この留学で米国人のメアリー・エルキントンに見初められ結婚。米国留学中の同窓はあのウィルソン大統領である。 語学が堪能な上に台湾植民の実績もある。台湾からの帰国…

稲村公望氏の新渡戸と柳田に関する誤解

2015年に出版された『民俗学•台湾•国際連盟 ー 柳田國男と新渡戸稲造』佐谷眞木人著を読んでからと思っていたが、本棚にまだ残していた。私は90年代から10年ばかり八重山諸島を中心に「やしの実大学」という事業を地元の有識者達とたち上げ運営してきた。そ…

稲村公望さんと私の関係

稲村公望さんの新渡戸に対する誤解があまりにも酷いので立ち上げたブログですが、最初からアクセル踏みすぎると息が続かなそうなので、ゆるゆるやります。 稲村さんと私の関係ですが、90年代、稲村さんが郵政官僚の時、不正腐敗の温床だった笹川平和財団で、…

新渡戸と柳田の関係

早速だが稲村さんがおもいっきり思い込みで誤解しているのが柳田との関係。論文や本も出ています。 柳田に地方の、すなわち民俗学の道を開いたのは新渡戸なのです。 引用します。 村松玄太、「近代日本における地方の思想に関する一・考察新渡戸稲造と柳田國…