後藤新平の大亜細亜主義(5)

f:id:yashinominews:20190907204454j:plain またイケメン後藤新平に会いに水沢に行きたいなあ

後藤新平の「大亜細亜主義」いよいよ最後となりました。

後藤の郷里、水沢にある後藤新平記念館の皆様にはせっかく文字を書き起こし、難しい漢字を調べていただいたのに申し訳ないです。

これも意地になって大雑把に解説すると、大局を、世界を見ずにいるとアジアは滅びる。例え名前だけ残ってあとは外国勢にいいようにされる。西洋も米国も歓迎するが、主権はアジア人にある。他方、人種差別は道理・天理に反する。

後藤の大アジア主義とは、中国の事であり、米国を意識した議論であった事が、少なくともわかった。現在、後藤の主張するように中国は、そしてアジアはアジア人が枢機を握る。西洋の植民地支配は終わりを告げた。しかしそのアジア人の国家運営は問題が多いことも事実だ。後藤であれば国を治めるのは「人」であるのだから教育をせよ、と言いそうだが。

 

縦い国其名を存するも是れ虚名のみ、人其命を支うるも是余喘のみ、是の故に苟もアジア洲中に動息するもの、政論の異同を論ずる無く、宗教人種の差別を問う無く、時の治乱に関せず宜しく斯の大アジア主義を毀損する無きを期すべし、而して此大アジア主義の下に一致せざるべからず、夫れ唯今日の功利に営々として主義の消長を慮らざる者是れ嘒百年の患害なり、一人の康楽に蕩々として而して世界の大勢を思わざる者は、儵億兆の禍毒なり、懼れざるべけんや、念わざるべけんや、抑大アジア主義たるや、アジアの康寧を無極に謀るに在り、而して他人種を排圧して独り自ら逞うせんと欲するにあらざるなり、人種の競争は人道に悖り、天理に逆らう、人類のなすべき所にあらず、惟うにアジア人大アジア主義に遵わざれば即ち自立する能わず、又徒に他洲人相争い相奪うにまかせ而して我れ之を制する能わざれば、則ち啻に我がアジア洲人自ら不幸を致すのみならず、実に世界人類の苛殃を速くなり、夫れ天地の康楽之を限る無し、世界の文化は之を塞ぎ難し、欧人来れ、美人来れ我れ未発の福地を発く、我れ焉んぞ之を拒まん、唯アジア洲の機枢はアジア洲人之を把持し、而して後以て五洲の和平を維持すべく、以て億兆の福祉を増進すべきのみ。

 

虚名…うわべだけの名声。

余喘…死ぬ間際のとぎれとぎれの息づかい。虫の息。

功利…功名と利益。幸福と利益。

営々…せっせと働くようす。

消長…物事の変化、盛衰。

嘒…細く美しい声の形容。「嘒嘒」声がよく調和しているさま。

患害…災い。災難。

蕩々…ゆったりとして。ゆらゆらして。

儵…ほんのわずかな時間のうちに。

康寧…やすらか。平穏無事。

無極…尽きない。限りない。

逞…勝手にふるまう。やりとおす。勢いが盛ん。

悖る…道理にそむく。

天理…自然の原理。正しい道理。

徒に…むだに。むなしく。

禍殃…思いがけない災難。

福地…仙人の住むところ。