五、天皇の大権
天皇の権限が強化されるとともに制限されている道具として、憲法と皇室典範がありこの2つが日本君主制の法的基礎を為している。
一つは世界最古の王朝の権利を支え、もう一本は民権を支持している。
そして民衆はこの民権を新たに自覚したばかりである。
新渡戸は伊藤公の言葉を引用
「憲法は”国家”の根本規則の集成であり、主権者とその臣民の間に相互に存在すべき関係を明確に定義するものである。」これに対し”皇室典範”は統治する王朝の維持と安寧、権利と特権にかかわり、それゆえに極度の政治的意義にあるものである、と新渡戸は説く。
日本の憲法から除かれている皇室の原則として”皇位継承”がある。
大英帝国では”王位継承法”に、他の国ではその憲法に規定されているが日本では憲法第二条に”皇室典範”に言及されているに過ぎない。伊藤はこのことを
「それらに関しては、臣民のいかなる干渉も許容されないことを示しているだ。」と説明する。
新渡戸は、「わが皇室は、かなりの超憲法的権限をもっている。」と記す。「皇室に関する事は憲法の枠を超える。逆に、皇室典範は”憲法”に決して影響を及ぼしえない。」と。
最後に新渡戸は憲法第9条に、天皇大権の任意性が現れており、欧州では勅令は法の執行に制限されているが日本では立法にも及んでいる事。そしてこの事が、大臣たちが不当に利用したり、「破廉恥な警官によって、きわめて容易に濫用されうる」と書いている。