2016-01-01から1年間の記事一覧

『日本-その問題と発展の諸局面』(21)

『日本-その問題と発展の諸局面』の第三章は前回で終了するつもりだったが、下記の新刊が紹介されていたので、同じ事を1931年のこの本で明確に述べている事だけメモしておきたい。 「満州国建国」は正当である 単行本 – 2016/7/23 ジョージ・ブロンソン・レ…

『日本-その問題と発展の諸局面』(18)

新渡戸著『日本-その問題と発展の諸局面』の第三章「新日本の出現」を5回に分けてなぞってきた。天皇制を中心にまとめるはずが、日清、日露、第一次世界大戦の日本の正義について新渡戸がどう言ってるのか関心がある。 一般的に日本に正義は無い事になって…

『日本-その問題と発展の諸局面』(19)

第一次世界大戦勃発時、日本はヨーロッパの戦争であるとの認識と、三国干渉の恨みが鈍り、ドイツに対する同情さえあった、という。新渡戸の記述で気になる箇所がある。 「またもし軍閥がきままに振る舞うことができたとすれば、日本がかくも速やかに”連合国”…

『日本-その問題と発展の諸局面』(17)

新渡戸稲造の天皇論。 もしも現憲法の「象徴」の箇所を新渡戸に依拠しているのであれば、それは「武士道」の下記の部分と『日本-その問題と発展の諸局面』の下記の部分である。 「神道の自然崇拝は国土をば我々の奥深きたましひに親しきものをたらしめ、そ…

『日本-その問題と発展の諸局面』(23)

新渡戸の天皇象徴論が展開されるのは、第四章の第一項「国体ー日本の憲政上の固有性」である。 象徴論の部分は下記に書いたので省略する。新渡戸は「天皇は国民の代表であり、国民統合の象徴である。」と言っている。 新渡戸稲造の天皇象徴論(3) - やしの…

『日本-その問題と発展の諸局面』(16)

最近佐藤健志さんの言論を追っている。といっても出版物は手に取っておらず、現時点ではウェッブ上の情報だけである。 佐藤氏の言論の中で東京裁判の事が触れられており、日本に正義はない事が前提になっている事を指摘されていた。 あの大戦で日本に正義は…

『日本-その問題と発展の諸局面』(13)

『日本-その問題と発展の諸局面』の第三章は 「新日本の出現」 "Emergebce of New Japan". 新日本は外国人(ペリー)が国内に現れた事によって将軍と皇室が合一することになった。そして、この外国人をどのように扱うか、が大きな課題であったと、新渡戸は…

『日本-その問題と発展の諸局面』(14)

新渡戸稲造の『日本-その問題と発展の諸局面』から天皇について論じた箇所を拾っている。 第三章は明治維新以降、この本が出版される1931年までが、この時代に生き、歴史を作った当事者としての視点で書かれている。 この本は英国の知識人を念頭に書かれて…

教育者としての新渡戸稲造

「ヒューマニスト、クリスチャン、反軍国主義の国際主義者」の面だけを抽出され、改竄された新渡戸のもう一つの偉大な業績は「教育者」である。 一高、校長。東京帝国大大学、京都大学、同志社大学での教鞭を取り、東京女子大学学長初代学長、東京植民貿易語…

『日本-その問題と発展の諸局面』(12)

朝廷を支持した大英帝国のヴィクトリア女王 幕府を支持したルイナポレオン 新渡戸の『日本-その問題と発展の諸局面』から天皇論に関連する箇所をなぞっている。 今回で第二章の歴史的背景を終了する。徳川幕府時代の天皇論である。 要約して書くはずが、一…

改竄する矢内原 改竄される新渡戸

新渡戸の言論を読みながら少しずつこのブログに書いている。結構な、というかかなりの反応がある。その多くが 「新渡戸がそんな事を言っていたんですか?」 という驚きの反応である。実は当方も当初は全く同じ反応であった。 矢内原の「南洋群島の研究」で矢…

昭和研究会の起源

明治神宮内の日本青年館 「民族の自決とレーニン」で紹介した『日本・1945年の視点』(三輪公忠著、東京大学出版会、2014年)は重ねて貴重な本である。 日本を戦争に追い込んだのであろう「昭和研究会」の起源も書いてある。 第三章大正の青年と明治神宮の杜…

『日本-その問題と発展の諸局面』(11)

新渡戸は同書において、あくまでも天皇制を支持する。 それは、「八紘一宇」とか「現御神」という言葉で導いた皇国史観とは違う*、科学的、学術的説明なので、当方はすんなり飲み込める。当方は天皇制に関するこういう説明を始めて読んだ。これならば英国人…

『日本-その問題と発展の諸局面』(9)

新渡戸が亡くなる2年前、 オックスフォード大学フィッシャー閣下編集世界史シリーズの一巻として書かれた『日本-その問題と発展の諸局面』。 この本の中の天皇論を中心になぞっている。 繰り返すがこの本(英文)が発行された2週間後に満州事変が起った。…

『日本-その問題と発展の諸局面』(10)

これもかなり驚いた。 新渡戸は9世紀始めの近畿地方の家系登録調査の数字を紹介している。 表とグラフでどうぞ。 (『日本-その問題と発展の諸局面』新渡戸稲造全集第18巻、2001、87頁から作成しました!) 「わが国の歴史の始めから、天皇がその妃や卑賤…

『日本-その問題と発展の諸局面』(7)

新渡戸が絶賛する太子による国家統合の後は「奈良時代と平安時代の文化」「輸入文化の衰退」と続く。 都(天皇の住居と行政官庁のあるところ)が頻繁に移動する理由を当方は疑問に思っていたが、「死が起きた場所は汚れているという俗信によるもので、官庁は…

『日本-その問題と発展の諸局面』(8)

「カナとは、これらの音節記号のことだが、それは漢字の約二万から三万に対して、四十七文字からできていて、中国の書籍崇拝や言葉崇拝に対する反抗の最初のラッパを鳴り響かせ、また、学問を民衆のものにする第一歩ともなった。」(『日本-その問題と発展…

新渡戸稲造博士の足跡を訪ねて

ちょっと休憩。 新渡戸稲造に関するブログを書きながら関連情報をウェッブで探していたら偶然みつけたサイトがある。 「新渡戸稲造博士の足跡を訪ねて」 http://inazo-nitobe.blogspot.co.nz/ 「新渡戸稲造ものがたり」という本を書いた柴崎由紀さんのサイト…

『日本-その問題と発展の諸局面』(6)

新渡戸稲造の聖徳太子への賛美は止まない。 この本の真髄はこの短い「国家統合」という項目なのではないだろうか? まず、新渡戸は前項で聖徳太子の「根本枝葉花実説」を紹介し、太子はコンスタンティヌスで、アソカであると賞賛し、この太子の「宣言」によ…

「建国の事情と万世一系の思想」(追記あり)

新渡戸稲造の天皇論がトントントンと進まない。 ブログに書く事によって、多くのコメントをいただける。 津田左右吉の「建国の事情と万世一系の思想」だ。 青空文庫で読める。 http://www.aozora.gr.jp/cards/001535/files/53726_47829.html 記紀に関する解…

『日本-その問題と発展の諸局面』(5)

新渡戸が亡くなる2年前、1931年に英文で出版した日本史をまとめた書籍の中から、皇室に関する部分を中心に書き出している。 二章 歴史的背景の第三項は「大陸文化の導入」では韓国と日本の歴史的関係の深さが書かれている。 「朝鮮は朝鮮人のため」という伊…

神武天皇オーストロネシア語族説

新渡戸稲造の『日本-その問題と発展の諸局面』の備忘録をトントントンと書く予定が足踏みしてしまった。 前回書いた「神武天皇オーストロネシア語族説」が原因だ。 最近開拓された台湾サークルのSNSに発信してみた。 私「神武天皇がオーストロネシア語族だ…

『日本-その問題と発展の諸局面』(4)

新渡戸稲造の日本史。 オックスフォード大学歴史学者、H.A.L.フィッシャー閣下編纂の世界の歴史シリーズの一冊である。 フィッシャー閣下はデビッド・ロイド・ジョージ政権で文部大臣も勤めた方である。 やっと”神武天皇オーストロネシア語族”の箇所が書ける…

『日本-その問題と発展の諸局面』(3)

『日本-その問題と発展の諸局面』の ”第一章 地理的特徴 ー とくにその社会的・経済的影響に関連して” では、天皇、皇室の事は触れられていない。 しかし最後の項目、「八、日本の地理の政治的国際的意義」に日本の防衛、海洋安全保障、特に太平洋に関する…

『日本-その問題と発展の諸局面』(2)

『日本-その問題と発展の諸局面』は新渡戸稲造全集第18巻に佐藤全弘氏の和訳が納められている。 原文は英文で、1931年にLondon, Ernest Benn Limitedから出版されている。 この本は、新渡戸稲造が序文で述べているように、7年間の勤務を終えジュネーブの…

『日本−その問題と発展の諸局面』新渡戸稲造1931.9.1

矢内原忠雄の『南洋群島の研究』から始まった、新渡戸、後藤新平への関心。 3人ともその業績を全て理解するのは当方には到底不可能なので、「植民」というテーマに絞って勉強しようと心に決めたばかりだが、憲法第一条の天皇象徴の箇所と新渡戸稲造の発言の…

新渡戸稲造の天皇象徴論(3)

やはりこうやって公開で書くと多くの反応をいただけるのでありがたい。 新渡戸が天皇は象徴である云々について、当方は『武士道』を引用して現在の憲法第一条との違いを主張したが、新渡戸は1931年、亡くなる2年前にロンドンからの依頼で『日本ーその問題と…

新渡戸稲造の天皇象徴論(2)

第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。 新渡戸稲造がこんな文章を読んだら怒り狂ってお墓から出てくるであろう。 櫻田淳さんが憲法の天皇象徴は新渡戸が言っていると繰り返すので、…

新渡戸稲造の天皇象徴論(2)

英国の王室がauthor and symbol と言ったBoutmyさん。新渡戸は引用しただけ。 新渡戸稲造が、天皇は日本の象徴であるという憲法に出て来る文章のオリジンかどうかはしっかり検証する必要がある。 象徴と言ったのはM. BoutmyのThe English People: A Study of…

『民俗学•台湾•国際連盟 ー 柳田國男と新渡戸稲造』佐谷眞木人著、講談社、2015年

昨年出たばかりの本である。 新渡戸稲造が自宅を解放して、柳田國男と「地方の研究」をしていた事はどこかで読んで知っていた。 しかし、柳田國男が文学青年から地域研究に方向を変えたのは、台湾から帰ってきた新渡戸の講演に触発されてであった事は知らな…