『日本-その問題と発展の諸局面』(2)

『日本-その問題と発展の諸局面』は新渡戸稲造全集第18巻に佐藤全弘氏の和訳が納められている。

原文は英文で、1931年にLondon, Ernest Benn Limitedから出版されている。

この本は、新渡戸稲造が序文で述べているように、7年間の勤務を終えジュネーブ国際連盟事務局から出発する夕べに執筆を依頼された。

依頼したのは、編集者のH. A. L.フィッシャー閣下。The Modern World - A survey of Historical Forces というシリーズ物m編集者である。1931年の時点で、アイルランド、ドイツ、インド、ロシア、フランス、エジプト、ノルウェイ、トルコ、ギリシャ、英国、イタリア、スペイン、オーストラリア、アラビア、南アフリカ、そして日本の16巻が出版され、カナダ、スコットランドが準備中であった。

 

序文には、国際連盟の仕事を終え隠居の身分の時間を使って書く予定が、新渡戸を待っていた日本は問題が山積みで本を書く時間は病気療養の時だけだったとある。

だから当初は「国防」「外交」「海外領土」「現代文学」についてもそれぞれ一章をあてる予定が結局下記の7章となった。

 

第一章 地理的特徴 ー とくにその社会的・経済的影響に関連して

第二章 歴史的背景

第三章 新日本の出現

第四章 政府と政治

第五章 教育上の制度と諸問題

第六章 労働、食糧、人口

第七章 日本人の思想生活

 

天皇に関しては何章かに渡って述べられている。

国際連盟事務局を去って日本に戻った新渡戸稲造を待っていたのは、昭和天皇も同じであった。

新渡戸を招いて報告を聞かれ、天皇と新渡戸の距離は非常に近くなったようである。