『日本−その問題と発展の諸局面』新渡戸稲造1931.9.1

矢内原忠雄の『南洋群島の研究』から始まった、新渡戸、後藤新平への関心。

3人ともその業績を全て理解するのは当方には到底不可能なので、「植民」というテーマに絞って勉強しようと心に決めたばかりだが、憲法第一条の天皇象徴の箇所と新渡戸稲造の発言の関連が気になって、新渡戸が死ぬ2年前に書いた『日本−その問題と発展の諸局面』を手に取った。

 

読み進めながら、すぐにこれこそ日本理解に最高の本だと気づき、数ヶ月前世話になったオックスフォード大学の教授に知らせた。この本は同大学の歴史学教授H. A. L.フィッシャー閣下の編集でもあり、英国人の読者を意識して書かれている。原文は英文である。

 

この本の中に出て来る新渡戸稲造の皇室論、天皇論がめっちゃ面白いのである!

神武天皇は実在した可能性があってしかもマレイ人!

即ち太平洋島嶼国と同じオースとロネシア語族であろう、との説なのだ。

その他にも興味深い点が多々あるので、何回かに分けてメモを作って行きたい。

 

ところで、この本の序文の日付は1931年9月1日。その約2週間後に満州事変が起る。

翌年1932年松山事件という、オフレコを無視した新聞記事が新渡戸を窮地に追い込む事になる。

新渡戸は日本を滅ぼすのは共産党軍閥、と言ったのだが、この本の中にも両者の事が書かれている。

同年日米関係修復のために米国を訪れ、1933年に太平洋問題調査会会議に日本代表団団長としてカナダを訪ね、会議終了後バンクーバーで客死する。

同地にある新渡戸記念公園を天皇皇后両陛下が2009年訪ねていらっしゃる。

 

「植民」というテーマからはちょっと離れるが天皇、皇室と新渡戸稲造について何回かに分けて少しメモを書いておきたい。