「ヒューマニスト、クリスチャン、反軍国主義の国際主義者」の面だけを抽出され、改竄された新渡戸のもう一つの偉大な業績は「教育者」である。
一高、校長。東京帝国大大学、京都大学、同志社大学での教鞭を取り、東京女子大学学長初代学長、東京植民貿易語学校校長、拓殖大学学監。1894年には教育を受けられない子供のために札幌に遠友夜学校を設立している。また新渡戸は自宅を開放し、多くの勉強会も開催。さらに後藤新平の提案で始まった通俗大学も新渡戸が仕切っている。
新渡戸は教育者であった。
植物学者の宮部金吾氏(1860-1951)が新渡戸を紹介した「小伝」が、新渡戸稲造全集第一巻の最後、解説の後に収録されている。そこに鶴見祐輔の新渡戸の教育者としての功績を紹介する記述が長く引用されている。(同書 439頁)
当時の日本は日露戦争直後の国民思想の動揺期で、粗暴な気分、文壇に現れた自然主義文学の唯物的な破壊的思想の影響下、迷う多くの青年に新渡戸が人格主義と理想主義を示したのだそうだ。その青年達が日本社会の各方面で活躍する事となる。
鶴見祐輔は後藤新平の娘婿で、新渡戸同様、後藤に最も近い人物だったのだろう。
鶴見祐輔は近衛文麿に近かったのかもしれない。大政翼賛会につながる翼賛政治会および大日本政治会の顧問となった経歴もある。
新渡戸稲造の人格主義、理想主義、国際主義、教養主義は、使い方を誤ると共産主義、軍閥主義、ファシズム等々に繋がる「諸刃の刃」だったのではないか?
鶴見祐輔 ー 後藤、新渡戸、近衛をつなぐ意外と重要な人物かもしれない。
<こんなのを見つけたけど、後で読む。「鶴見個人に焦点を当てた研究の蓄積は乏しい」とある。>
リサーチペーパー(平成15 年12 月25 日提出)
東京大学法学政治学研究科・公共政策Ⅱ専修コース2 年 学籍番号26165
鷺坂 真聡