『日本-その問題と発展の諸局面』(9)

新渡戸が亡くなる2年前、

オックスフォード大学フィッシャー閣下編集世界史シリーズの一巻として書かれた『日本-その問題と発展の諸局面』。

この本の中の天皇論を中心になぞっている。

繰り返すがこの本(英文)が発行された2週間後に満州事変が起った。

共産主義軍閥が、まさに日本を潰そうとしていた危機を新渡戸は正視していた。

日本の植民政策を、実践と共に進めた新渡戸は中国、朝鮮文化への深い尊敬と理解があった。

 

第二章歴史的背景の7項目目は「荘園の形成」である。

「荘園の発達と普及において、宗教団体も世俗貴族に劣らず悪事を働いた。」(84頁)

 

皇室が、太子が庇護した仏教。

寺領は課税を免除されていた。そこに目をつけた大地主は自分の土地や財産を寺に寄贈した。

これぞ、元祖タックスヘブン!

寺はどんどん豊かになる。おまけに国家が潤沢な助成金を与えタダで海外留学も!

当時、出世するには貴族出身でなければならなかったが、僧職は誰でもなれた!

そして敬虔な人ではなく、野心家が仏僧になっていったのである。財産と名誉を目指して!

「京都の宮廷の年代記にも、ウルジーラスプーチンのような人物は全くいないではない。770年頃には、僧侶で玉座をうかがう者さえいた。」(85p)

道鏡の事である。

日本仏教の道を誤らしたのは、タックスヘブン!租税回避だった!

「やがれ彼らは自分から軍隊を訓練し、私兵をたくわえた。そして、時には朝廷に対して武装をととのえて示威行進を平気でしたりした。」

 

「根本枝葉花実説」

太子が「花実」に例えて庇護した仏教は、恐ろしい毒花と化し、毒の実をつけ、その根本を攻めたのである。

白河上皇が「賀茂河の水、双六の賽、山法師、是ぞわが心にかなわぬもの」と嘆くのも頷ける。