信夫清三郎という政治学・歴史学者の存在を知ったのは白石隆著『海の帝国』参考資料にその名があったからだ。しかも「植民」とは何か知らなそうな白石氏が「読む価値もない」と書いていたので、読む気になったのである。その著書とは『ラッフルズ伝』でこれはキンドルで購入でき、昨年繰り返し読んだ。再読したい。信夫清三郎が、侵略戦争に突き進む日本への学者として抵抗行動として1943年に刊行され1週間で発禁処分を受けた。信夫氏は同じ抵抗の表現として1941年に『後藤新平 科学的政治家の生涯』を著した。これはテーマが後藤であったためか、後藤の娘婿、鶴見祐輔氏が序を書いているためか発禁処分は受けなかった。
後藤新平とトーマス・ラッフルズ。二人の植民者を評価する形で取り上げた信夫氏は「植民」とは何かわかっていたのだ。そして当時の日本が武力によって進めようとした「アジアの解放」は、アダム・スミス以来の(本当はそれよりも前の)英国の植民にとって代わる物どころか、酷いことである事を示そうとしたのだ。
そう。良い植民と悪い植民がある。
これから後藤を読む。後藤とラッフルズに共通しているのは「科学的」政治、植民であった事だ。
本書の構成は以下の通り。一日一編は無理か?無理せず、しかしコンスタントに読んで行きたい。そしてほとんど知られていない同書を紹介するために、簡単な読書メモも残したい。
序編 政治と科学
第一編 医政治家としての後藤新平
第二編 新統治領行政家としての後藤新平
第三編 国際外交家としての後藤新平
第四編 国民的指導者としての後藤新平
終編 近代日本史における後藤新平の地位
余談だが信夫清三郎氏の父親は有名な外交官・国際法学者の信夫淳平である。激しい性格の父親で次男と四男は自殺している。