『日米関係史』(1891年)が納められている、新渡戸稲造全集17巻(2001年、教文館)に『日本国民』も収められ、その付録に「太平洋に平和を」という新渡戸が1911年にルランド・スタンフォード・ジュニア大学での講演記録がある。
20年前に書いた『日米関係史』の中で、既に新渡戸は、日本人移民が増加すれば、中国人排斥法が日本人にも影響するだろうと書いているがまさにその通りになったようだ。
この講演の中で興味深いのが新渡戸がラフカディオ・ハーンを批判している箇所である。長くなるが引用したい。
「日本をアメリカから疎外しようとして提示されたすべての理由の中で、アメリカ人全般にこれまで最も心配と思われた理由は、日本人は同化できないという主張です。ラフカディオ・ハーンは「人種対立主義」という語を流行らせました。それは、日本人は心理的にはるかに隔たっているので、あなたたちが日本人を西洋の知識で教育すればするほど、日本人は思想上あなたたちから遠くそれてゆく、という信念です。ハーンは日本人の性質に対してすばらしい洞察力をもってはいましたが、またおそらく、日本的事物に対する彼の熱心のあまり、日本人を独特の民族と見えさせれば日本民族の奉仕していることになる、と考えたのかもしれません。そしてハーンの意見は、それをわれわれに面と向かって突き付けて責める多くの人たちに反響しています。不幸にも、我々のあいだにはとほうもない熱狂的愛国者がおり、それは他のどこでも同じですが、彼らは世界の他のものと違っている事を自慢し、ちょっとした相違を大げさに言い、西洋諸国がたどる道からはなれることを主張し、特発症疾患を生来の力と同視し、そのようにして、国民の短所を国民的美徳に高め、わざと自らを高しとしています。」(290頁)
今でもいるような気がする。ハーンみたいな外国人とそれに共鳴する日本人。