<プリンストン大学ウィルソン排斥運動>
米国のプリンストン大学が、学生の抗議運動を受けて、同大学の学長も務めた米国大統領ウッドロー•ウィルソンの名前を同学から消し去る、という。
理由は、ウィルソンが人種差別者であるからだ。
"Understand Windrow Wilson"
By Richard Cohen
November 24, 2015
http://www.realclearpolitics.com/articles/2015/11/24/understand_windrow_wilson_128836.html
共和党の知人に確認したところ、ウィルソンが人種差別者であることは多くの歴史家も検証しており動かし難い事実であるという。加えて、私は始めて知ったが人種差別組織KKKの誕生を題材にした「国家の誕生」という1915年の映画は米国で大ヒットし、ウィルソンはホワイトハウスで上映会まで開催したのだそうだ。
<矢内原の「米国の日本移民排斥について」>
これを知って、読み飛ばそうと思っていた矢内原の「米国の日本移民排斥について」(植民政策の新基調。矢内原忠雄全集第一巻: 595-609)を急に読む気になった。
1924年の日本移民禁止条項を含む米国の新移民法について、排斥の経済的理由、排斥の人種的理由、排斥の社会的理由、排斥の政治的理由、排斥の法律的理由、以上5点から科学的に分析しようとしている。
なぜ日本人だけなのか? 日本側は人種差別を訴えるが米国は経済的理由であると主張する。また日本人が同化しないから、生活レベルが低いこと等を理由にあげているが、その要因を作っているのは米国ではないか、と矢内原は反論する。
また移民法は国内法か?と疑問を呈し、
「米国は己の欲する如き移民法規制定の権利を有するといふが如き法律的理由を以て、その最後の場面を飾りたるは決して米国の名誉ではない。「権利」は屢々暴行の美名である。」(矢内原1963: 609)
と手厳しく糾弾している。
<効き過ぎた?日本大使の”おどし”>
この日本移民排斥法が遮二無二可決された背景を矢内原は分析している。
移民法案の米国議会審議中、埴原大使が公文にて
「本問題は日本に取り便宜の問題にあらず、主義の問題なり。国民感情の問題を惹起せざる限り単に数百名の、否数千名の日本人が他国の領域に入国を許されざるや否やの事実は、何等甚だ重要なる問題にあらず。重要なる問題は日本が一国として他国より正当の尊敬及考慮を受くる資格ありや否やの点にあり」といひ、而して此法律の通過は「重大なる結果」をもち来たらする虞れありとして抗議したのである。(矢内原1963: 605)
米国は埴原大使の「重大なる結果」という表現に反応した、と矢内原は書いている。即ち「覆面の威嚇」、「ただで済むと思うなよ。」と受け取られたようである。
矢内原は、当時日本は既に帝国となっており、米国とは満州の権益で衝突していたし、メキシコ領に日本が海軍根拠地を作るという「デマ」だけで米国上院はそのような行為を禁止する決議を可決している、ことを当時の米国の敏感な反応としてあげている。
以前、ブログに書いたアラスカのブリストル湾事件を思い出しても、2隻しか派遣しなかった日本漁船について100隻以上が来たとの報道をしているから、米国のこのパラノイア的反応は頷ける。
<League of Nation, Birth of Nation>
ウィルソンが唱えた国際平和、League of Nation。
ウィルソンが讃えた映画、 Birth of Nation
人種差別者ウィルソンが唱えたどちらのNationも白人の世界だったのである。
しかし新渡戸稲造が事務局次長として育てたLeague of Nationは白人以外の小国のパワーが増す結果となった。そして日本はその小国の数の力に、League of Nationを去るのである。